成長の限界 人類の選択
(ダイヤモンド社2005年3月)
自分の不勉強、現状認識がかなり甘かったことを自覚しました。
ローマクラブが1972年に第一次報告書として提出した「成長の限界」(ダイヤモンド社刊)では、コンピュータシミュレーションを使い、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば100年以内に地球上の成長は限界に達すると警鐘を鳴らし」ました。
本書は、その30年後の最新版の報告です。
結論から言うと、人類の経済活動は、1980年過ぎに地球が人類を扶養できる限界を超えたという判断です。
その程度をエコロジカル・フットプリントという指標によって表現しています。
エコロジカルフットプリントでいうと現在すでに人類の経済活動は1.2程度で1.0の限界を超えているとのことです。(1.0で丁度地球一個分)
なぜ、1.2になっているのに現実に破綻していないかというと、地球が蓄えていた自然資源という貯金を食いつぶしているからです。
原因の第一要因は幾何級数的に増える人口です。
このすでに限界を超えてしまっている人類の経済活動をどう限界内に戻せるか、
が本書のテーマです。
コンピュータプログラムのシミュレーションのさまざまなシナリオは以下の通りです。
2002年から始まります。
シナリオ1
このまま進んでいく場合
2020~30年で経済成長が突如止まり(臨界点)、下降し始め、崩壊します。
資源のコスト急騰が大きな原因です。
人口、食料、工業品、エネルギーの生産などが一挙に減ります。
シナリオ2
1よりも再生不可能な資源(石油など)が多くあった場合
成長が臨界点に達するのに1より時間がかかりますが、そのあと一挙に崩壊が来ます。
環境汚染が深刻な原因になります。
シナリオ3
2と同じでありながら、汚染除去技術がどんどん発展していく場合
2よりも長く高い生活レベルを持続しますが、やはり臨界点に達し崩壊します。
食料生産がネックになります。
シナリオ4
3と同じでさらに食料生産技術が発展していく場合
より長く高いレベルを持続させますが、最終的に使える土地が激減して臨界点に
達し、崩壊します。
シナリオ5
さらに土地浸食を食い止める技術が発展するようにした場合
崩壊は先送りされますが、やはり崩壊します。
シナリオ6
さらに資源節約の技術が発展していく場合
21世紀の崩壊をさけることができる。
人口は80億弱で安定、ただだんだん資本コストが高くなり、生活水準の維持がで
きなくなり、衰退していきます。
以上によって、本書では、技術と市場だけでは行き過ぎている人類の経済活動の崩壊を回避できないことを示します。
シナリオ7
シナリオ1と同じ条件で、2002年から世界中で夫婦間での子どもの数を2人に制限した場合
人口増は2030年頃75億人でピークになって、そのご臨界点に達し、崩壊。
出生制限をしても一世代間は人口増加が進み、環境汚染がひどくなりすぎます。
シナリオ8
人口制限に加え、2002年から工業生産を安定させるという目標を世界が取り入れた場合
ピークから人口、生活水準が徐々に衰退していきます。
以上によって成長を抑制するという目標設定だけでは持続可能にならない。
シナリオ9
2002年から人口(夫婦間で子ども2人)と工業生産を安定させる目標とすべての
技術を加えた場合
人口80億弱で安定し、全員が21世紀中、望ましい生活水準を保てる
以上のことから、著者グループは、「持続可能性」という目標を人類が設定し、技術と市場という道具を使って初めて、人類は壊滅的打撃を受けずに豊かに生きていけることを示します。
ただこのシュミレーションモデルでは、戦争、テロ、犯罪、汚職等の要素は組み入れていないので、現実世界の状況はこのシナリオよりも厳しいかもしれないと
いうことです。
人類は農業革命、産業革命の次に「持続性革命」を成し遂げられるかどうかとい
う歴史的時期にいます。
そしてこの革命が起こるには、構造を変える必要はないと著者たちは語ります。
著者たちが依拠するシステム・ダイナミックスでは、システムの中を流れる情報
が変わり、適切な情報のフィードバックループができれば、自然にシステムは変わっていきます。
いま何が起こっているかの正しい情報がフィードバックされることが一番大切と
いうことです。
著者たちは最後に、持続可能性革命への5つのツールをあげます。
科学者である彼らがこのテーマに関して次のようなことを提案することにやや臆
するところもあったそうですが、やはりこの5つのツールが人類がこの革命を成
し遂げるために一番必要なものだとして、最終章で語っています。
ビジョンを描くこと
ネットワークをつくること
真実を語ること
学ぶこと
慈しむこと
愛が一番大切だと語っています。
人と人がつながりあい、助け合うことを信頼することが「持続可能性」革命最大の力であることを伝えています。
合掌