
「自己組織化する系は、自己を外部へ向かって形成しながら、その内部から成長する。外部から組織化された機械的な系は、成長しない。それは、作られたものであり、外部から組み立てられたものであるからだ。
自己組織化する系は、外部から組み立てられた系とは大きく異なり、多次元的である。構造的にも機能的にも多様性を表す。これに対して、機械的な系は均一であり、一元的である。それらは、構造的な均一性と機能的な一元性を示す。
また自己組織化する系は、自己を治癒することができる。変化する環境条件に適応することもできる。これに対して、機械的に組織化された系は、治癒したり適応する事は無い。単に壊れるだけである。
動的な構造がより複雑になるほど、それはより内発的に駆動される。変化は、外部からの強要によるだけでなく、その内部の条件によってももたらされる。生命系にとって、自己組織化能力は、健康と生態学的安定性のための必須要因であると言えるだろう。ある生物体や系が、一元的に1つの機能を改善するように機械的に操作されると、一言的な生産の増加を含めて、生物体の免疫が減少して、病気や他の生物体の攻撃に無防備になってしまう。または、その生物体が生態系で優勢になり、他の生物種を置換してしまい、ついには絶滅に追いやることになるであろう。エコロジーの問題は、工学のパラダイムを生命に適応したことに端を発しているのである。このパラダイムは、遺伝子工学によってさらに深いものとなった。その事は、生態学的にも倫理的にも大きな問題である。」
ヴァンダナ・シヴァ『バイオパイラシー グローバル化による生命と文化の略奪』