「第一に、お金では幸せは買えないと言うことだ。貧困は絶望を産むが、富の増加もまたささやかな快適さが得られた後は、絶望を増大させる。
第二に、蔓延する物質主義は幸せをますどころか、人々を疎外し、恐れを抱く、不信感に満ちた孤独な存在にしてしまう。
第三に、人間の主たる動因は、エコノミストが私たちに信じ込ませようと願うような、飽くことなき物質的欲望ではなく、他者との親交の追求にある。物質的な快適さに対する最低限の要求さえ満たされていれば、愛情や人との親交にこそ、私たちは幸せを感じる。
私たちは所有し貪りたいのではなく、仲間でありたいのだ。
これらの点を考え合わせると、経済を支配する2つの前提に疑問が湧いてくる。すなわち、人間が人生で最も手に入れたいと願うものは皆、稀少で、私たちの欲望はとどまるところを知らないと言う前提だ。だが実際には、私たちが最も望むもの、すなわち他者からの愛情や受容、認知は稀少ではなく、限りなく潤沢なのだ。
エコノミストには分かっていないとしても、広告業界はそれを理解している。毎年何千億ドルもの広告費が、この奥深い動因に訴えかけるために投じられる。広告業界は、そうした欲求を満たすには、より多くのものを購入し、ため込み、消費するのが1番であると言う趣旨を、言葉を取り繕って語りながら、その裏では、そうしたでっち上げの欲望が実際には、私たちをコミュニティーの探求からますます遠ざけることを十分承知している。