食料が減少すると、まだ肥沃な土地にバッタが押し寄せ、個体密度が上がって後生的(エピジェネティック)な反応が生じ、以前はおとなしく温和だったバッタが、空腹に堪えかねて狂ったようなイナゴに変わる。羽と脚が小型になり色も変わる。この変化は世代を超えることなくの個体レベルで起きる。おとなしいバッタよ、さようなら、そして群れをなす肉食性のイナゴよ、こんにちは。「同じ遺伝子、同じ個体だが」とドブスは記す。「まるで異なる生物になる」
人間のDNAが濃厚以前からほとんど変化しておらず、狩猟採集民と現代人が異種に分類される事は無いにしても、文明化の前後で人類の行動はイナゴとバッタほどに異なっている。農耕の始まりとともに人口爆発が起き、私たちは人類史上初めて過密な定住地で暮らした。人の暮らしのあらゆる側面が大きく急速に変わった。力関係、家族構成、女と子供の地位、食料源とその質、他の動物との関係、病気や死の経験、他の人口の多い土地との摩擦ー土地と財産の所有、崇拝する神とその神との関係。。。
クリストファー・ライアン『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』